飲食店やお出かけスポットなど、長崎市を中心に地元の魅力を発信し続けるインフルエンサーの目に、変わりゆく長崎のまちはどのように映っているのでしょうか。それぞれの視点から今の長崎について語ってもらいました。
地元の「楽しい」を発信するきっかけ

ー それぞれの活動のきっかけについてお聞かせください。
美咲さん「2021年にSNSでの発信を始めました。コロナ禍で県外へ行けなくなったとき、あらためて地元を巡ってみたのがきっかけです。
最初に行ったのは出島でした。生まれも育ちも長崎市ですが、地元だからこそ訪れるのは十数年ぶり。実際に足を運ぶと、こんなにすてきな空間だったんだと驚きました。長崎の独特の歴史についても、もっと学び直したいという気持ちになったんです。

投稿をすることで、まずは地元の人に長崎市の魅力をあらためて知ってもらいたいと思いましたし、コロナが明けて長崎を訪れる人たちの参考になればと思い、発信を始めました。」
飯人さん「僕は宮崎県都城市の出身で、長崎市内の大学への進学を機に住み始めました。長崎駅前にあったカフェが行きつけになり、店主や常連さんとの話がきっかけで、大学3年の頃からカメラに興味を持つようになったんです。
コロナ禍だったので、飲食店を盛り上げたいという気持ちで、趣味で始めたカメラを生かしてお店紹介のSNS投稿を始めたのが活動のきっかけです。」

ー 活動の前後で、長崎のまちを見る目は変わりましたか?
美咲さん「大きく変わりました。これまで友だちと遊びに行く場所は、数カ所に限られていて、『長崎って何もないよね』と思っている時期もありました。でも発信を始めて、それまで知らなかった場所に足を運んでみると、『何もない』と思っていた自分が恥ずかしくなるほど、長崎市は魅力の宝庫だったんです。
それから有名なスポットだけでなく、自分で積極的に新しい場所を開拓するようなりました。マップを見て『ここなら海が一望できそう』と穴場の展望台を見つけたり、普段なら通らない道にも入ってみたり。おかげで、それまで知らなかった地元の魅力を発見するのが楽しみになりました。」

飯人さん「確かに、僕も同じような変化がありました。レンズ越しに見て、誰かに伝えようとすることで、初めて気づくことがあるんです。
料理の迫力やその店が醸し出す雰囲気など、その店の特徴がよく見えるようになりました。」
長崎市は、情熱的なまち
ー 他にはない、長崎市ならではの魅力は何だと感じますか?
美咲さん「伝統行事やイベントへ熱量は独特だなと思います。幼少期から、長崎くんちやランタンフェスティバルに出演者側としても関わってきましたが、特に長崎くんちにかける地元の人たちの情熱はすごいです。10月の本番に向けて、1年かけて徐々に盛り上がっていく雰囲気は、県外のかたにもぜひ味わってほしいですね。」
飯人さん「長崎くんちへの情熱は、長崎の人たちの地元愛そのものですよね。宮崎にもお祭りはありますが、長崎くんちほど、まち全体が盛り上がる祭りは初めて見ました。
他にも地区ごとに『くんち』があったり、ペーロンもすごく盛り上がっています。イベントとイベントの間隔が近くて、常に『次』に向けてまちが動いている感じがします。スタジアムシティが出来てからは、サッカーやバスケの試合もあって、その熱気をさらに感じやすくなっているのかもしれません。
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それから、まちの風景も大きな魅力だと思います。故郷の都城市は、田んぼと山に囲まれた盆地だったので、長崎市に初めて来たときは全く違う景色に驚きました。坂の多い都会で、海と山がすごく近くて、路地を一本入るだけで違った風景が現れるのが不思議で、すごく面白いまちだと思いますね。」
美咲さん「取材先でも、まちの皆さんが『一緒に盛り上げていこうね』と私たちのような発信者を温かく迎えてくださいます。そんな人のよさも、すてきな部分だなと思います。
観光のまちだからこそ、年齢も国籍も関係なく歓迎してくれる雰囲気があるのかもしれません。」
飯人さん「飲食店でお話を伺っていると『地域全体を盛り上げたい』と話されるんです。『この食材は地元の〇〇さんが作っている』と生産者さんの話が出ることも多く、つながりの強さや人と人との距離の近さを感じます。」
変わりゆくまちで、大切にしたいもの
ー 魅力を発信する立場として、今の長崎市をどう見ていますか?
飯人さん「長崎駅が新しくなって、長崎スタジアムシティができて、人の流れがこれまでとは変わったように感じます。
新たなにぎわいの場所が生まれてる一方で、名店がひっそりとなくなってしまうかもしれないという危機感もあります。フォロワーさんからは『新しくオープンしたお店を紹介してほしい』という声もいただきますが、古くから愛されてきた場所の価値もしっかり伝えていきたいと思っています。」

美咲さん「変化へのワクワク感と、寂しさは表裏一体ですよね。商店街の皆さんからは、新しいスポットへの期待と同時に、お客さんの足が遠のいてしまうのではないかという不安の声も聞きます。
私たちの情報を参考にしてくださるかたが多いからこそ、新しいものと古くからあるいいものをバランスよく伝えていく姿勢が、大切だと思います。
新しいも古いも含めて、まるごと長崎市の魅力。それを伝えていくことも、私たちインフルエンサーの役割の一つだと感じます。」
ー 変化する長崎のまちで、どんなつながりが広がっているでしょうか?
飯人さん「スタジアムシティができたことで、観光だけでなくサッカーやバスケの応援のために、長崎市を訪れる人が増えたと感じます。
県外から来たアウェーチームのサポーターと、隣の席で観戦することがあります。試合後には、どちらともなく『応援おつかれさまでした』『来てくれてありがとうございます』と声をかけて、お互いをたたえ合うような瞬間があって、これまでになかったつながりだなと思いますね。」

美咲さん「スタジアムシティについて投稿したときには、県外のかたから『地元のスタジアムと比べてピッチとの距離が近いのがいいね。長崎に行ってみたい』というコメントをたくさんいただきました。
また、ドラマのロケ地を紹介したときも『写真や動画を通して見られてよかった』という県外のかたからのメッセージが届きました。そうやってSNSを通して長崎の変化や話題に注目が集まったり、『いつか長崎に行こう』という気持ちが全国に広がったりしているのがうれしいですね。」
インフルエンサーが見る、長崎の課題
ー 長崎市のこれからについて「もっとこうなればいいな」という思いはありますか?
美咲さん「子育て中のママたちからのお問い合わせで多いのが『雨の日の遊び場が少ない』というお悩みです。長崎市内の人口減少が進んでいるなか、子育てがしやすい環境づくりはとても大切だと思います。
また『長崎に残りたいけど、合う仕事が見つけられない』という地元の人の声も聞きます。柔軟にリモートで仕事ができたり、休みが取りやすいなど、働く場所や時間の選択肢が広がれば、地元で働きたい人は多いのかもしれません。」
飯人さん「僕にも『家族連れで行けるお店』や『キッズスペースがあるお店』についてのお問い合わせがあります。以前よりは増えましたが、家族みんなで利用しやすいように配慮されたお店はまだ多くはないようです。
そういった取り組みをするお店を応援しながら、子育て世帯の視点から情報を届けていくことも大事だ思います。」

美咲さん「それから、長崎市内では以前よりも、女性や子育て世代が楽しめるイベントが増えていて、とてもうれしく思っています。ただ、後日イベントのレポートを投稿すると『そんなイベントがあったなら行きたかった』という反応も多いんです。
すごくいい企画なのに、情報が十分に届いていないのはもったいないなと感じます。自分たちのような発信者とイベント主催者が、事前にもっと連携できれば、より多くの人に魅力を届けられるのではないかと思っています。」
発信から広がる長崎のWA
ー 長崎市を盛り上げていくうえで、今後挑戦したいことや、広げたいWAについてお聞かせください。

飯人さん「僕自身、1つのカフェとの出会いがきっかけで、常連のお客さんや観光客、移住者など人脈が広がり、いろんなかたとつながることができました。
お店へ取材に行くと、そこから次の取材先を紹介してくださって、また次へというつながりも広がっています。飲食店同士が、互いに力を合わせて長崎市を盛り上げようという姿勢に、学ばされることが多いです。
発信者としてWAをつなぐお手伝いをしていますが、投稿を見てくださるかた自身も、行ったことのない店に足を運んだり、お店の人やお客さんと会話をしてみるなど、楽しみながら輪を広げていってほしいと願います。
それから、今後は飲食店だけでなく、お店を支える『生産者』の思いまでつながるような発信にも積極的に挑戦したいです。一皿の料理に込められたストーリーを伝えることで、食べる人と料理する人、さらには生産者の輪をもっと広げていきたいと思っています。」

美咲さん「私の活動テーマの一つに、被爆3世として『平和』を伝えるための発信があります。毎年夏には平和学習ができるスポットを紹介したり、実際に体験してレポートするなど、『平和』をテーマにした投稿を行っていて、今年は平和ガイドのかたに案内をお願いして、フォロワーの皆さんとのツアーを実現しました。
特に、『長崎に移住したからこそ、子どもに平和の尊さを伝えたい』と親子で参加してくださったママの思いが、心に深く響きました。
これまではお出かけの『きっかけ』になる情報を発信してきましたが、これからは平和ツアーをはじめとした、リアルに体験できる場を企画し、長崎に行く『目的』となる情報を発信していけたらと思います。
人と人をつなぐことで、長崎の魅力を盛り上げる活動を続けていきたい。それが、私が広げたい「長崎のWA」です。
(終)
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