快晴の秋の週末、水辺の森公園の芝生広場では、マルシェイベント「水辺の森ワイヤーフェス2025」が行われました。手作りアクセサリー、こだわりのカレー、子どもに人気の雑貨など、60を超えるキッチンカーやテントが並び、家族連れをはじめたくさんの人でにぎわいました。

マルシェでランチを調達してピクニックを楽しむ人、愛犬との散歩がてら買い物を楽しむ人など、楽しみ方はさまざま。心地よい屋外でそれぞれが思い思いの時間を過ごす、穏やかな雰囲気が広がっていました。

このイベントを企画・運営するのは、「ワイヤーママ長崎」として活動する大住照美さん。長崎市を中心に数多くのマルシェイベントを手がけています。15年にわたり地域に「遊びと楽しみの場」を作り続ける大住さんに、お話しを伺いました。

自分たちでつくる「遊び場」

大住さん「もともと『ワイヤーママ長崎』というフリーペーパーを発行していました。『ママをワイヤー(線)でつなぐ』という思いで、子育て世代が地域の暮らしを楽しめる情報を届けていたんです。

ただ、発行するだけでは読者の反応が分かりにくく、『直接声を聞く機会がほしい』と感じるようになりました。そこで思い切ってイベントを企画したのが15年前。初めての試みでした。

右も左も分からない状態でしたが実際に開催してみると、『いつも読んでいます』『おでかけの参考にしています』と声をかけていただけました。それまでは発信するだけの一方通行だったのですが、読者の皆さんと楽しい時間を共有できたことが、とってもうれしかったんです。」

大住さん「イベントを始めたころは私自身も子育ての真っ最中でした。
最近はずいぶん増えてきましたが、当時は子どもを連れて遊びに行くところが少なかったので、『子連れでも安心して出かけられる場があったらいいな』という切実な思いから、子どもが喜ぶ体験や家族で楽しめるグルメという視点で、イベントをつくっていったんです。

イベントを続けていくうちに、協力してくださる出店者さんも徐々に増えていきました。お客さんとして来場したママが『実は自宅でアクセサリーを作っています』と出店側に変わり、そこからまた友人を誘って、と遊び場をつくる仲間の輪が広がっていきました。」

出店者側として関わることになった原田さん。「出店の方法も分からずにいた頃、仕事の途中でワイヤーママの事務所前で、偶然テルさん(大住さん)と出会いました。同じ年代ということもあり自然と親しくなって、趣味だったハンドメイドでイベントに出店するようになり、気づけば約10年続いています。仕事だけでは出会えなかった人たちとの縁が広がったし、イベントに出るのが新たな人生の楽しみになりました。」

大住さん「普段は”○○ちゃんのママ”として過ごしている人も、その日は”自分”として輝ける。子どもたちとの遊び場をつくることが、誰かのチャレンジの場にもなる。そう気付かされて、ますますイベントづくりに力を入れるようになりました。」

今ではイベントの主催だけでなく、企業からのイベントコーディネートの依頼も入るように。年間50〜60回ものマルシェイベントを主催・サポートしており、開催場所は長崎市内を中心に県内、九州全域にまで広がっています。

それぞれが有意義な時間を

大住さん「ありがたいことに、現在は定数の倍以上のかたが応募してくださっています。長崎市内をはじめ、県内外から来てくださる出店者さんも増えました。」

イベントには毎回約60店舗が出店しますが、応募は常に倍以上。130近い応募から3日かけて選んでいるそうです。
「本当は皆さんに出ていただきたいのですが、場所には限りがあるので、会場の特性や来場者層にマッチする出店者さんを選ばせていただいています。

親子連れが多い場所ではキッズメニューの導入を提案するなど、一歩踏み込んだアドバイス、成功のためのサポートも行っています。

イベントはみんなで楽しむもの。お客さんだけでなく、出店者さんにも有意義な時間を過ごしてほしいので、特に初めて出店するというかたには、搬入から陳列、売上を伸ばすためのアドバイスまで、丁寧にコミュニケーションを取るようにしています。」

そんな温かい関わり方が信頼を集め、主催者と出店者という関係を超えて、家族やママ友には言えないような人生相談をされることも増えたと言います。「テルさん」と親しまれ、先輩ママとして多くの女性から相談を受ける存在になっているそうです。

地元愛が深まる過ごし方

大住さん「『地元だけど、それまではあまり立ち寄る機会がなかった』という場所にも、マルシェをきっかけに足を運んでいただいていると感じます。
買い物や飲食だけで終わるのではなく、その場所でゆっくり過ごす楽しみ方が定着してきているのではないでしょうか。

のんびりと過ごすことで、自然とその場所の新しい魅力に気付いたり、愛着が湧いたり、『ここっていいところだな』と地元を見直すきっかけにもなっているようなんです。

特に水辺の森公園は、海に近くて開放感があり、芝生も広く木陰も多いので、気持ちよく過ごせます。『今度はピクニックに来よう』と再び訪れる人も多いみたいです。

秋のイベントは今回で8年目ですが、回を重ねるごとに、レジャーシートや簡易テントを持ってきて、一日中のんびりされるかたが増えたと感じますね。

『地元でもこんなに楽しい過ごし方ができるんだ』という声を聞くと、本当にうれしくなります。」

普段のイベントは日中の開催が中心ですが、夏には暑さを避けるため、夕方から夜にかけて楽しめるイベントも実施。水辺の森公園の夕景や、夜風の気持ちよさを味わってもらうことができたそうです。

変化する長崎のまちを楽しむために

ワイヤーママ長崎の活動は、「100年に1度」といわれる長崎市の新しいまちづくりにも広がっています。

長崎駅前多目的広場、出島メッセ長崎、県庁跡地など、新しい施設が市民にとって使いやすい場所になるよう、その利活用の検証にも協力してきました。

大住さん「新しい施設が完成したときに、市や県のかたから『最初のイベントをお願いできませんか』と声をかけていただくことがあるんです。それぞれの場所の特徴を見きわめながら、実際にイベントを開催してみて、気づいたところをお伝えしています。

現場で運営するからこそ気づくことは多いです。『ここは日陰が少なくて夏は大変そう』『思ったより動線が分かりにくいな』とか、『こうしたらもっと使いやすくなる』という改善のアイデアも見えてくるんです。」

大住さん「そうした市民目線の気づきをお伝えすることで、施設がより良い場所になっていく力になれるのは、とてもありがたいことですね。」

“遊び場づくり”で培ってきたノウハウは、長崎市の新しいまちの可能性を引き出す力にもなっています。

遊び場としての長崎市

―「遊び場」としての長崎市には、どんな魅力があると感じますか?

大住さん「長崎駅周辺や長崎スタジアムシティなどの新しいまち、グラバー園や孔子廟など歴史ある異国情緒のまち、そしてすぐ近くにきれいな山や海もあって、長崎市にはいろんな魅力がぎゅっとコンパクトにつまっていると感じます。

わざわざ遠出をしなくても、市内でさまざまな遊び方ができるのは、長距離移動が簡単ではない子育て世代にとってラッキーなことですね。

それから、長崎市内の“人の距離の近さや親切さ”は大きな強みだと思います。
私自身、子育て中は出先で地元のかたのやさしさに助けられることが、本当に多かったです。観光客に親切に声を掛けている姿もよく見かけますし、イベントでも人との温かなつながりを強く感じます。

これからも長崎市ならではの魅力を感じられる場所でイベントを開き、地元での “楽しみの選択肢” を増やすお手伝いができたらと思います。」

大住さんが15年間育ててきたのは、単なるイベントではなく、人と人が出会い、つながり、それぞれが自分らしい楽しみを見つけられる「場」そのもの。

長崎市の土地の魅力と人の温かさを活かしながら、自分たちの手で新しい楽しみを生み出していく。
そんな長崎ならではの「遊び方」が、これからさらに広がっていきそうです。

(終)

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