「話してみたい長崎市民を教えてください」
市民同士がつながり、実際に長崎のWA!を広げていく対談企画。
DJの春田さんがつながりたかったのは、長崎国際テレビアナウンサーの佐藤肖嗣(さとうたかし)さん。
長年、佐藤さんが担当する報道番組「NIB news every.」のスタジオでの対談が実現しました。
佐藤さんと話したかった理由

春田さん
「話してみたい人を教えてください」と言われて、ダメもとで佐藤さんのお名前をあげさせていただきました。佐藤さんは、長年、長崎のまちのニュースを伝えてこられました。そんな佐藤さんの目には、今の長崎のまちはどのように映っているのか聞いてみたかったんです。
佐藤さんからOKをいただいたときは本当に嬉しかったです。今日を楽しみにしてきました。少し緊張しています。
佐藤さん
対談相手に選んでいただいて驚きましたが、とても嬉しかったです。光栄に思いながら、僕でいいのかな、なぜ僕なのかなと。

春田さん
実は、幼稚園の頃に佐藤さんのニュース番組に出たことがあるんです。news every.の前身の番組でした。そのニュースのテーマ曲がすごく好きでピアノで弾いていたんです。それを見た母がテレビ局に連絡したんです(笑)。
佐藤さん
覚えていますよ。小さな子どもが、番組のテーマ曲を弾いてくれていると聞いて、スタッフみんなで驚いたんです。20年近く前でしょうか。取材をきっかけにスタジオに来てくださったのが初めての出会いでしたね。
春田さん
佐藤さんはずっと変わらない印象です。感情を出さず、淡々とニュースを読む。でも、どこか温かい。そこがいいなと思っています。
佐藤さん
僕はアナウンサーであって、コメンテーターではありません。ですから、ニュースの中で意見を言う必要はないと考えています。ニュースに対して何かを感じたり思ったりするのは視聴者であり、語るのは取材対象者。僕の役割はあくまで「進行役」です。だから、あえて、自分の感情をできるだけ出さないようにしています。

春田さん
その「感情を出さない」という姿勢に、僕は逆に人間らしさを感じます。信頼が積み重なっているというか。
佐藤さん
ありがとうございます。でも僕の理想は、元日本テレビの藤井貴彦さん。彼はテレビでも普段でも全く変わらない人。だから、あたたかい言葉をかけるだけでなく、泣いても、時に意見をすることがあっても、自然に受け入れられる。僕もそうなりたいと思っています。彼のコメントはどれも“テレビ用の言葉”じゃなく、普段の人柄の延長なんですよね。
長崎を伝える
春田さん
日々、どんな気持ちで報道されているんですか?
佐藤さん
まず全国ニュースがあって、その後ローカルのニュースに切り変わります。そこで、全国で起こったことをそのまま伝えても、ただくり返しになってしまいます。
だから、番組に関わるスタッフみんなでいつも話しているのは、「この話題を長崎に置き換えたときに、長崎ではどんなことが考えられる? 逆に何をしないといけない? 何が足りない?」ということ。
自分たちのまちに置き換えて考えることを大切にしています。
最近の話題でいえば、女性初の総理大臣が生まれました。
では、県民はどう思っているのか?長崎の女性はどう思っているのか? というふうに、自分たちの暮らしの中にはめ込んで探っていく。ニュースを作るうえで、そこはいつも大事にしています。
春田さん
なるほど。確かに、街頭インタビューなどをされていますね。
佐藤さん
春田さんがインタビューを受けられていた記事を読みました。その中で、長崎ならではの遊び方をされていること、特に「福岡の真似をして小さな福岡になるのではなく、ニッチになろう」という言葉が印象に残りました。とても良い視点だなと思いました。
真似をするのは入り口としていいことだけれど、そのまんま真似をするのではなく、自分たちのまちにあてはめて考えることが大切ですよね。
春田さん
自分たちのまちで何ができだろうと、視点を「このまち」において考えてみることは、ローカルニュースと、まちづくりの共通点だと思いました。
本物に触れられる場所ができた
佐藤さん
よく長崎のまちは「100年に一度の変革期にある」と言われますが、僕もそう思っています。
ただ、まだ変革途中だなっていう感覚が強いです。
これまでの100年って、例えば、家でいうと「ちょっと傷んできたからリフォームしようか」とか、「模様替えしようか」みたいな段階だったと思うんですけど、
今は家そのものを建て替えようとしている段階ですよね。
そして、建て替えは、図面通りいかないことも出てくるじゃないですか。
「ここがゆがんでるね」「強度が弱いね」「思ったよりスペースが狭いね、広かったね」とか。
そういうのが、今後いっぱい出てくると思うんです。
そのときに長崎市としてどう向き合っていくか。そこが次のフェーズかなと思ってます。今はいい方向に向いている。でも、これを持続させるためには、ここからまたひと勝負!と思っています。
春田さん
まさにこれからですね。
佐藤さん
はい。「変わり始めたまち」に住んでるって、すごく面白いですよ。

春田さん
まだ変革の最中だという感覚はとてもわかります。僕らがどうこのまちの変化を受け止めて、楽しんでいくのか問われているような気持ちです。
佐藤さん
そうですね。最近で言うと、去年の長崎スタジアムシティ開業ですね。それ以前からの長崎駅周辺の整備、出島メッセができたこともあって、コンサートやイベント、国際会議の回数が明らかに増えたと思うんです。
ということは、僕らがイベントなどに生(なま)で接する機会が増えたということ。これはすごくいい方向にいってるなと感じます。よく、まちに建物や施設ができると「箱物(はこもの)」って言われるけれど、箱は悪いものじゃない。ハードがあって、そこでいろんなものに触れられる場所なんです。だからこそ気づくことがある。
そこから、ソフトをどう活かすかなんですよね。
コロナのとき、当たり前の日常がなくなり、友達や家族と会えなかった時期がありました。その時「温度と感触」って絶対に必要なものなんだと気づいた人が多かったと思うんです。
肌で感じるから、感情とか構想とか想像力が生まれる。だから箱も大事なんですよ。直接触れることができる場所があるから、考えが広がると思うんです。
春田さん
僕も、駅前の開発エリアでDJをする機会をいただきました。市民が企画できる場も増えましたよね。大きな企業だけじゃなくて、小さな団体や、市民が企画して、参加して。「まちが人を動かす」ってこういうことだなと感じました。
サッカーのWA!
春田さん
V・ファーレン長崎がJ1に昇格しました。V・ファーレン長崎の試合の実況といえば、佐藤さんのイメージがあります。J1に昇格したことを受けて、どんなWAが広がると思われますか?
佐藤さん
V・ファーレン長崎がJ1でプレーするのは、今回が2回目になります。「J1復帰までの8年間で県民のサッカー熱がますます高まった。」と、昇格後にお会いした高木監督も話されていました。さらにはクラブ創設20周年、Jリーグ参入当時からホームゲームを実況させて頂いている立場から、長崎のサッカーファミリーが確実に増えてサッカーを見る目のレベルも上がっていると感じます。
2018年のJ1リーグ昇格時も感じたことですが、やはりJ1はクラブの規模やサポーターの規模もJ2に比べると大きくなります。2024年のスタジアムシティ開業後初めてのJ1となることもあり、人や物をはじめ様々なハード面、ソフト面で予想もしない交流が広がっていくことだと思います。「こんなWAが広がる」というよりも、一見、サッカーとは無縁の「こんなWAも広がる!」と、現段階では想像すらできない分野にJ1効果が広がっていくことを楽しみにしています。

春田さん
僕も楽しみです。
長崎というまちの魅力と課題
春田さん
長く報道に携わってこられた中で、印象に残っているニュースはなんですか?
佐藤さん
意外かもしれませんけど、大きなニュースより日常の話です。
詐欺を未然に防いだコンビニ店員さんや、闘病を乗り越えた兄弟とか、ニュースのテーマ曲をこどもが弾いているとか。
誰かの小さな善意や、努力や、見ている人が「明日も頑張ろう」って思える日常の幸せなニュースが心に残っています。
春田さん
小さなアクションが、誰かの希望になるということですね。
佐藤さん
ニュースって、そういう役割があると思うんです。人の心をちょっとだけ前向きにする。災害報道は命を守るためだとしたら、日常の報道は、心を少しだけ豊かにするもの。そういう思いはありますね。
春田さん
まちかどインタビューなど市民にも多く接してこられたと思います。どんな市民性を感じますか?
佐藤さん
やはり「優しさ」です。観光地という環境があるのかもしれません。電車やバスの乗り降りで困っている人がいれば自然に手を貸す。道を聞かれれば丁寧に教える。おもてなしの心が日常にあるように思います。
春田さん
日常の風景の一つですね。

佐藤さん
会社が出島にあるので、私もよく道を尋ねられますが、見ず知らずの方に頻繁に声をかけられるなんて、ないことだと思うんです。これも観光地である長崎市ならではだと感じますし、この環境が優しく親切な市民性を育んでいるのだと思います。
今、目の前にいる人と楽しく話そう!
春田さん
佐藤さんは、そのコミュニケーション力で、いろんな長崎のWA!に入っていけそうなイメージがあります。
佐藤さん
それが…社交的に見えるかもしれませんが、実はとても人見知りなんです。休みの日は何をしているのかというと、家で一人、テレビでアニメを見ています。

春田さん
意外です。でも、仕事ではたくさんの方と話をされていますよね。対談のプロ、話を聞くプロというイメージがあります。そこに、WA!を広げて繋いでいくコツがあるように思うのですが、アドバイスいただけませんか。
佐藤さん
家で一人テレビを見るのが好きな私がいうのもなんですが…
どなたかにお話を聞く際にいつも思っているのは、質問しようと思わないことです。目の前のこの人と楽しく話そうと思うことを心がけています。
春田さん
そうなんですね。今日は質問したいことを事前にまとめて持ってきていて、なんかすみません。笑

佐藤さん
いえ、いいんですよ。このカンペがあったとしても、目の前にいるこの人との会話を楽しもう!と少しでも頭の隅に置いておくだけで、全然違うと思います。
春田さん
そういえば、自分がラジオ番組をしていた時も、少し似た気持ちで挑んでいました。いろんな人が聞いていると思わずに、一人に話しかけるように意識を切り替えたら、気持ちも楽になったのを思い出します。
いいまちって、どんなまち?
春田さん
僕には、長崎のWA!は究極、みんなが暮らして楽しい、住みやすいいいまちを目指すものだと考えているのですが、佐藤さんは「いいまち」はどんなまちだと思われますか?
佐藤さん
住んでいる人が、何も心配せずに日常を送れるまちです。わたしたちは、災害やコロナで、当たり前が崩れる怖さを痛感しました。平穏に暮らせることこそ、まちの豊かさの根っこだと思います。その平穏な日常の上に、挑戦や文化が育つのだと思います。だから、日常の何気ないニュースが心に残っているのかもしれません。

春田さん
佐藤さんの言葉の根っこには「視聴者がどう受け取るか」という視点があるということを今日お話しして感じました。ニュースも、まちづくりも、相手の心を想像することから始まるのだなと思いました。
佐藤さん
春田さんのようなかたがやっている、小さくても熱量のある活動をどう支えるか。そこにメディアや行政の役割もあると思います。
誰かが安心して暮らせる、少しでも前向きになれる──そんな毎日の積み重ねが、きっと「いいまち」をつくっていく。僕も、ニュースを通して、少しでもお役に立てたらと思っています。
アナウンサー×DJ つながりが生む新しいWA?!
春田さん
せっかくこうして佐藤さんとつながったので、何か一緒にやってみたいのですが、どんなことができそうでしょうか。
佐藤さん
私の特性を生かすなら『春田さんの“何か”にあわせて私が言葉や声を発する』ということが最も現実的だと思います。ただ、頭が固くなってきているので、春田さんのアイディアも聞いてみたいです。
春田さん
僕も、自分ができることと掛け合わせるならば、佐藤さんの朗読と自分のDJによる音楽が最適な組み合わせだと思います。一昨年前、長崎県美術館で、映像とDJを組み合わせたパフォーマンスをしたことがあるのですが、佐藤さんの声による朗読が組み合わさると、とてもおもしろく刺激的なパフォーマンスができるのではと思いました。

佐藤さん
“伝統をそのままに受け継ぐ大切さ”がある一方で、長崎の「100年に一度の変革のように」“進化する、させていく必要性”も重要だと感じています。私と春田さん、そして長崎のまちも今後、“新たな何かが”生まれていくことに期待したいと思います。
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